本作「SOUL GEM META」の展覧会において、鑑賞者はメタバース上に創造された「魂の世界」をVRで体験する。 「魂の世界」の定義や解釈は、国や地域、時代や宗教などによって様々であるが、私の実体験に基づく解釈では、「魂の世界」とは即ちあの世であり、私たちが住む物理次元と並行して存在する異次元世界である。魂とは、その次元に存在する私たちの核であり、それは物理次元 (＝地球) における人間としての経験を通じて、成長・進化してゆく。 私はメタバースをアートメディウムとして使うことにより、作品の出力先の次元を選択できると考えている。前作「Soul Gems 魂の宝石」では、「魂の世界」を物理的手法で表現したが、今回は出力先をメタバースとすることで、物理表現とは異なる側面の表現が可能になった。それは例えば、「魂の世界」を常に物理次元と並行した別次元に存在させることができること。また、鑑賞者は時間や距離を超えて「魂の世界」の中で出会うことができること。 非物理の領域が多次元的に広がることにより、表現の幅も広がる。 加えて本作では、「魂の世界」を構成する多数の魂を、デジタルエレメント「SOUL GEMS」としてアウトプットする。それらをNFTとしてブロックチェーンの宇宙に解き放つことにより、魂同士の繋がりや、歴史や進化という、魂のストーリーの再現を試みたい。 コロナ禍と連動するように、近年メタバース・XR・NFT・AIなどのニューメディアやテクノロジーやが急激に発展した。それは今後も加速し、3年後にはメディアと私たちの関係性は変わっているかもしれない。 よって、本作品「SOUL GEMS META」は、メディアやテクノロジーの進化に伴い、表現メディアや表現手法をアップデートすることを前提としている。それは同じメディア上のアップデートかも知れないし、別の手法へのトランスファーとなるかも知れない（実際、すでににこの作品は、物理的な手法から今回の手法へとトランスファーされてきている）。表現が変化しても揺るがないのは、この「Soul Gems -魂の宝石-」シリーズの核が、「魂」という普遍的な概念だということ。私は「魂と私たち人類」と「作品の核と表現媒体」の関係性に類似点を見出しているが、作品の核がアウトプットされることで育つというならば、それはまるで魂の成長や進化であり、表現媒体の更新はそれらを体現する変容である。私たち人類も、魂という核を軸にして、年月をかけて肉体を幾度となく替え今ここに居るのだ。私はこのことに作品とアートの未来を感じる。 作品はもはや媒体にとらわれず、時代とそれを取り巻く変化とともに、軽やかに姿を変えていって良いだろう。その提示のもとに、「Soul Gems -魂の宝石 -」シリーズは、幾通りもの表現を自身の歴史として刻んでゆくだろう。私がこの世から去り魂の世界へ還った後も、時代を超えて誰かに引き継がれてゆくのが理想的だ。 作品は進化する。変化の波に乗って。私たち人類が、私たちの魂が、そうであるように。 ​ 2022年10月 來迦結子 (2023年7月一部修正)